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2026.05.20
相談員ブログ

「まだ症状がないのに?」注目される無症候性アルツハイマー病とは

認知症というと、一般的には「物忘れが進行して、日常生活に支障が出ている状態」と指します。しかし近年の医学界では、「脳内では病気が始まっているけれど、症状はまったくない」という段階に大きな関心が集まっています。これが「無症候性アルツハイマー病」と呼ばれるフェーズです。

【「病気」と「認知症」との定義】
ここで整理しておきたいのが、「アルツハイマー病」と「アルツハイマー型認知症」という言葉の使い分けです。かつてはこの二つはほぼ同じ意味で使われてきましたが、現在は明確に区別されています。
・アルツハイマー病:脳内にアミロイドβなどの異常なタンパク質が蓄積し、神経細胞が損傷を受け始めている「生物学的な変化」そのものを指します。
・アルツハイマー型認知症:脳の変化が進んだ結果、記憶障害や判断力の低下が現れ、自立した生活が難しくなった「状態」を指します。
つまり、脳に変化が起きていても、本人が元気に日常生活を送れていれば、それは「アルツハイマー病」であっても「認知症」とは診断されません。この「症状が出る前の期間」が、実はきわめて長いことが明らかになってきました。

【発症の15~20年前から始まっている変化】
アルツハイマー病の原因とされるタンパク質「アミロイドβ」は、ある日突然、脳に現れるわけではありません。近年の研究によれば、認知症の症状が出る15年から20年以上も前から、脳内ではすでに蓄積が始まっていることが分かっています。
たとえば、70代で認知症を発症した人の場合、そのプロセスは40~50代の働き盛りの頃から静かに始まっていた可能性があるのです。認知症は高齢者だけの問題と思われがちですが、その「種」が蒔かれる時期は、意外にも早い段階にあります。この時間的経過の長さこそが、この病気の大きな特徴といえます。

【脳にゴミが溜まっても、平気な人がいる理由】
不思議なことに、脳内にアミロイドβがたくさん蓄積していても、一生認知症にならずに過ごす人がいます。これは、脳が持つ「認知予備能(脳のバックアップ力)」という仕組みのおかげです。
人間の脳は、一部の神経回路がダメージを受けても、別の回路がその役割を肩代わりして補うことができます。例えるなら、メインの道路が渋滞(病的な変化)していても、たくさんの「裏道(予備の回路)」を持っていれば、交通の流れを止めずに済むようなものです。
読書、趣味、運動、友人との会話などを楽しんでいる人は、この「裏道」が網の目のように張り巡らされており、脳の変化を跳ね返す力が強いと考えられています。「脳の健康状態」と「生活の質」が必ずしも一致しないのは、この予備能力に個人差があるためです。

【検査は「未来を予測する」から「早期治療」のステージへ】
かつて、症状がない段階で脳の変化を調べることは、ただ不安を煽るだけだという意見もありました。
しかし、検査技術と治療薬の進歩により、その意味合いが劇的に変わっています。
現在は、PET検査や脳脊髄液検査に加え、血液検査でアミロイドβの蓄積リスクを高い精度で予測できるようになりつつあります。そして何より大きいのは、「脳内のゴミを除去する新しい治療薬」の登場です。これらの薬は、脳のダメージが少ない初期段階ほど高い効果が期待できるため、症状が出る前、あるいは出始めた直後の「早い段階での気づき」が、一生を左右する大きな価値を持つようになってきました。

【「備え」としての無症候性アルツハイマー病】
無症候性アルツハイマー病という概念を知る意義は、不安になることではなく、「発症までも長い猶予期間を味方につける」という視点を持つことにあります。
脳の変化を早期に把握できれば、生活習慣病の管理を徹底したり、より意識的に「脳の裏道(予備能力)」を鍛えたりと、具体的な対策を講じることができます。「脳に変化がある=すぐに認知症になる」わけではありません。最新医学が目指しているのは、脳に変化があっても、自分らしい生活を一日でも長く続けるための「攻めの備え」なのです。
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