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2023.09.28
相談員ブログ

帰宅願望が起きる高齢者がいるのは何故?

【帰宅願望とは】
「じゃあね。そろそろ帰りますね」
老人ホームに入居して暫くたっても、持ち物を携えて出かけようとする認知症の方がおられます。「ここがおうちですよ」と何回説明しても同じ言動を繰り返すことがあります。
認知症のBPSD(心理・行動症状)のひとつに帰宅願望があります。自宅にいても「家に帰りたい」と訴えたり、実際に今の住まいから出て行ってしまう症状です。
帰宅願望は以前住んでいた家を指すだけではなく、生まれ故郷だったり、仲の良い家族や兄弟を意味していることもあります。
自分の居心地の良い落ち着く場所に戻りたいという訴えなのです。
これは認知症の方に限らず、人間の根源的な願望なのかもしれません。
では、帰宅願望が生じる理由は何なのでしょうか?具体的に見ていきましょう。

【帰宅願望の原因】
帰宅願望の理由は人によりさまざま異なりますが、共通しているポイントは、不安やストレスがあることです。
・見当識障害
自分の置かれている状況、時間や季節、場所が認識できなくなる症状です。
人に対しての見当識障害がある場合は、たとえ家族と一緒にいても家族と認識できず、知らない人に囲まれているような気持ちになっているのです。
そして自宅にいたとしても、「他人の家にいる」と思ったりしてしまうのです。
自分のいる時間や場所が把握できない方は、孤独やストレスを感じることになります。
・夕暮れ症候群
認知症の方の中には、外が薄暗くなると落ち着かなくなり、不安になる人もいます。夕方に「家に帰る」と訴えることを、夕暮れ症候群と呼びます。
主婦だった方は家族が戻ってくるから夕食の支度をしなければと思ったり、働いていた人はその日の仕事をまとめて自宅に帰らなければとそわそわします。
見当識障害によって現状を認識しづらいため、夕暮れ症候群があらわれやすいと考えられています。
・安心できない環境
慣れない場所や普段と違う環境にいると、落ち着かず帰宅願望を訴えることがあります。
また、注意されたり、孤独を感じたりすることで、安心できない環境と認識してしまわれます。
・別の欲求の現れ
「お腹がすいた」とか、「疲れた」、「眠たい」、だから帰りたいと思うことは健常者でもあります。その気持ちが帰宅願望として表出することがあります。

【帰宅願望への対応】
ご本人の不安の要因を探り、その気持ちに寄り添うことが大切です。否定するのではなく、共感して不安を取り除きましょう。
・不安の原因を解消する
帰宅願望には原因があることが多く、その不安の原因を明らかにして解消すると症状が和らぐ可能性があります。
「お腹がすいた」、「眠たい」、「疲れた」、などといった生理的欲求が満たされないことをきっかけにして、不安な気持ちが帰宅願望としてあらわれている場合、不調の原因を探ってそれを取り除けば落ち着くことがあります。
・興味あることに気持ちをそらす
時間を余してしまうと余計なことを考えてしまいますが、何かに集中している時には時間を忘れてしまうものです。本人の興味あることや、熱中して取り組めることを提供するようにしましょう。
・居場所をつくる
大勢の人がいる環境よりも、他人を気にせずにゆっくりとくつろげる自分の居場所をつくると落ち着くこともあります。
居場所とは、人間関係も含みます。仲が悪かったり、話が合わない人と距離を置くだけでも帰宅願望が減少したりします。
【帰宅願望への考え方】
夕食前の忙しい時間帯に、外に出て行こうとされたり、不穏になる認知症の方がいると、介護する側はイライラしてしまいます。しかし、帰宅願望やそれに伴う行動を問題と捉えてしまっては解決しません。
帰宅願望は認知症だから生じる要求ではないのです。
自分が安らげる場所や人たちのところに戻りたい。この欲求は人間だれしもが抱く欲求なのです。
帰宅願望を訴える方の過去の習慣や生活、そして性格や生涯などを把握して、コミュニケーションを取りましょう。
本人の訴えの中に何が不安なのかを汲み取ると、対応の仕方を見出していける場合があります。



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