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2023.10.03
相談員ブログ

認知症と痴呆について

【痴呆から認知症へ呼称変更】
認知症という言葉が一般的になっていますが、この頃あまり「痴呆」という言葉を耳にしなくなりました。
「かあさんが痴呆になってしまって、困っているんだよ」
といった会話は以前は日常会話でもよく交わされていました。
しかし、痴呆という言葉に侮蔑的なニュアンスが含まれるとして、厚生労働省は検討会を設け、2004年12月24日に呼称変更の採択がなされました。
その結果、「痴呆」に代わる行政用語を「認知症」に制定したのです。
これは、あくまでも行政用語の変更ですが、現在、日本医師会では「認知症」という呼び名で病名を統一するように指導をしています。
つまり、痴呆とは認知症と同じ病気で、認知症に呼称が変わったということなのです。

【痴呆という言葉について】
では、痴呆という言葉の始まりについて掘り下げてみます。
江戸末期から明治の初期にかけて、西洋医学の様々な用語が日本語に訳されました。
その頃に「Dementia」は痴呆と訳されたのですが、ラテン語の語源「de-mens」は「正気から外れる」という意味があるそうなのです。
「痴」は「おろか」とか「くるう」という意味があり、「呆」は「ぼんやり」とか「魂の抜けた」という意味があるのです。
そのような意味合いを持つ「痴呆」という呼び名は偏見や差別的なニュアンスを助長させ、本人や家族の尊厳を傷つけてきました。
また、痴呆という言葉の響きや文字の成り立ちから、「世間的にも恥ずかしい病気になってしまった」という誤った認識が拡がるようになっていきました。
そして、症状を発症した人を人目から隠すようになったことから、早期診断や早期発見を妨げてきました。

【呼称変更せざるを得なかった理由】
痴呆から認知症へ名称を変更する必要性があったのは、痴呆という言葉の使用には以下のような様々な問題点があったためです。
・ 偏見や差別を感じさせ、侮蔑的表現である。
これからも増加していくこの病気に対して、国民的な理解を得るための妨げになる。
この名称によって該当者やその家族は自尊心が傷つけられる。
・名称が病状・実態を正確に表していない。
何もかもが理解できなくなるわけではない。
・早期発見や早期診断などの取り組みを妨げてしまっている。
社会的羞恥心などの認識が診断に至るまでの支障になっている。 

認知症に呼称変更するにあたっては、単に用語を変更するという広報 を行うだけではなく、これに併せて、認知症に対する誤解や偏見 の解消等に努める必要がありました。

【認知症に対する意識】
厚生労働省の発表によると、日本における65歳以上の認知症の人数は2020年に約602万人と推計されています。
さらに2025年には約675万人と高齢者の5.4人に1人が認知症になると予想されていて、認知症に対する理解や対策は切迫した課題です。
現在、認知症に対する民間や公的資格ができてきたり、認知症サポーター養成事業なども広がりを見せていますが、まだまだ取組むことは山積されています。

因みに、ある高齢者施設の管理者をしている人が、ご家族からある注意を受けました。
それは認知症の親御様に関して、「最近‘認知’が進んでしまい」との発言がご家族にとっては小馬鹿にされた気がしたということなのでした。
「認知症」はあくまで病気であるという言葉のイメージがありますが、‘症’を取り除くと軽くあしらわれたニュアンスに響いてしまう場合もあります。
言葉にまつわるイメージは言い方を変えるだけではない、意識の領域も含んでいることを考えさせられました。






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