2025.04.14
相談員ブログ
人工呼吸器について
【人工呼吸器の役割と目的】人工呼吸器は、自発呼吸が困難な患者に対して、機械的に酸素を肺に送り、二酸化炭素を排出させる医療機器です。
呼吸は生命維持の基本機能ですが、肺や神経、筋肉などの障害でこれができなくなると、生命に関わるため、人工的に呼吸を補助する必要があります。
人工呼吸器の目的は主に以下の3つです。
・換気の確保:肺に酸素を取り入れ、二酸化炭素を排出する
・呼吸筋の休息:過度な呼吸労力から解放し、体力を温存
・気道の確保:気道閉塞時に空気の通り道を確保する
また、人工呼吸器は重症患者に限らず、短期間の使用(例:全身麻酔下の手術)でも広く使われています。
呼吸がうまくできない状態は、「呼吸不全」と呼ばれ、命に関わることもあります。
人工呼吸器は、重症な患者の命をつなぐ大切な役割を果たしているのです。
【人工呼吸器が必要な主な疾患とその特徴】
人工呼吸器が使われるのは、以下のような症状や疾患があるときです。
・[疾患・状態]肺炎・急性呼吸窮迫症候群(ARDS)・COVID-19重症
[主な問題点]酸素をうまく取り込めない: [呼吸器の必要性] 酸素補助〜強力な換気補助が必要
・[疾患・状態]慢性閉塞性肺疾患(COPD)、急性増悪
[主な問題点]二酸化炭素が排出しづらい [呼吸器の必要性]呼吸筋の疲労が進むため補助が必要
・[疾患・状態]心不全・肺水腫
[主な問題点]肺に水がたまり呼吸困難 [呼吸器の必要性]圧をかけて呼吸を補助
・[疾患・状態]脳卒中・頭部外傷・てんかん
[主な問題点]呼吸の指令が出ない [呼吸器の必要性]意識障害がある場合は挿管管理が必要
・[疾患・状態]筋ジストロフィー・ALSなど
[主な問題点]呼吸筋が弱い [呼吸器の必要性]長期の人工呼吸管理が必要
・[疾患・状態]全身麻酔中
[主な問題点]自力で呼吸ができない状態 [呼吸器の必要性]手術中の一時的な人工呼吸が必要
・[疾患・状態]早産児・未熟児
[主な問題点]肺が未熟 [呼吸器の必要性]専用の人工呼吸器による支援が必要
【人工呼吸の方法と使い分け】
[鼻カニューラ(酸素チューブ)]
・使用する疾患例:軽度の肺炎、心不全、慢性閉塞性肺疾患(COPD) 、手術後など
・使用者の状態:自力呼吸は可能で、わずかに酸素が不足している場合
・特長:もっとも簡便で、在宅や病棟でもよく使用される。酸素濃度は低~中程度。
[酸素マスク(フェイスマスク)]
・使用する疾患例:中等度の肺炎、肺塞栓、喘息など
・使用者の状態:呼吸はできるが、より多くの酸素を必要とする場合
・特徴:鼻カニューラよりも多量の酸素を供給可能。酸素濃度は中~高程度。
[CPAP(シーパップ)持続的気道陽圧法]
・使用する疾患例;睡眠時無呼吸症候群(SAS)、急性心不全による肺水腫、一部のCOVID-19患者など
・使用者の状態:自分で呼吸できるが、気道の閉塞や肺のつぶれを防ぐ必要がある場合
・特徴:吸気と呼気の間一定の圧力を気道にかけ続けることで、肺を膨らませ、酸素交換を助けます。非侵襲的(チューブを体内に入れない)な方法です。
[BiPAP(バイパップ) 二相性気道陽圧法
・使用する疾患例:慢性閉塞性肺疾患(COPD)の急性増悪、神経筋疾患による呼吸不全、一部の脳疾患後の呼吸補助、慢性呼吸不全患者の在宅管理
・使用者の状態:呼吸の力が弱く、自力では酸素の取り込みや二酸化炭素の排出が不十分な人
・特徴:吸気時には高い圧力(IPAP)。呼気には低い圧力(EPAP)というように、吸うときと吐くときの圧力を変えることで、呼吸の負担を減らします。
NPPV(非侵襲的陽圧換気)の代表的な方式です。
[気管挿管+人工呼吸器]
・使用する疾患例:重症肺炎、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、脳出血や薬物中毒で意識消失、心肺停止後の集中治療、全身麻酔下の手術中
・使用者の状態:自発呼吸が非常に弱い、あるいは無い状態
・特徴:口または鼻から気管にチューブを挿入し、人工呼吸器と接続します。完全に機械で呼吸を補助または代行します。ICUでの管理が必要になるケースが多いです。
[気管切開+人工呼吸器(長期管理)]
・使用する疾患例:ALS、筋ジストロフィーなど長期呼吸補助が必要な神経筋疾患、長期の意識障害や慢性呼吸不全、外傷や腫瘍で口や喉が使えない場合
・使用者の状態:長期間人工呼吸器につながれる必要がある場合
・特徴:首に小さな穴(気管孔)を開けて、そこから呼吸器につなぎます。話す・食べるなどの機能を保ちやすく、管理がしやすくなります。在宅での呼吸管理にも用いられます。