2025.06.05
相談員ブログ
口腔ケアについて
【口腔ケアとは】口腔は食物の入口であり、常に栄養分が豊富で、湿度や温度が保たれているため、細菌にとっては快適な環境です。
そのため、適切な口腔のケアを行わないと、病原性を持つ細菌が増殖しやすくなります。
特に身体の抵抗力が低下している際には、こうした細菌が感染症の原因となることがあります。
口腔ケアは、これらの病気を予防するための重要な手段の一つです。
とくに高齢者においては、口腔機能の低下(オーラルフレイル)が全身の健康状態に影響を及ぼす可能性があるため、日常的なケアが欠かせません。
口腔ケアには、口腔内を清潔に保つことに加え、健康維持や機能改善という側面もあります。
【高齢者の口腔について】
高齢者の口腔内には、以下のような特徴や問題が見られることがあります。
・ドライマウス(口腔乾燥症)
加齢にによる咀嚼機能の低下や、薬剤の副作用などによって唾液の分泌が減少し、口腔内が乾燥しやすくなります。
唾液には食物の嚥下を助ける働きに加え、口腔内を清潔に保つ自浄作用があります。唾液が不足すると、細菌が増殖しやすくなります。
・補綴(ほてつ)治療や入れ歯の使用が多い
多くの高齢者は虫歯や歯周病の治療歴があり、補綴物(詰め物・被せ物)や入れ歯を装着しています。
これらの器具は、食物残渣が残りやすく、清掃が不十分だと虫歯や歯周病の再発の原因になることがあります。
・食物残渣が残りやすい
きざみ食やとろみ食など、高齢者向けの食事は歯茎や口腔内に残りやすく、清掃が困難になります。
その結果、口腔衛生が保ちにくくなり、虫歯や歯周病のリスクが高まります。
・舌苔(ぜったい)の付着
口腔の自浄作用が低下すると、舌の表面に舌苔が付きやすくなります。これにより、味覚障害や口臭の原因となることがあります。
・歯肉の炎症
加齢に伴い歯肉が退縮し、そこに歯垢や歯石が付きやすくなります。これが原因で歯肉炎を起こすことがあり、さらに入れ歯による機械的刺激も炎症の一因となります。
【口腔ケアの種類】
口腔ケアは大きく分けて、「機能的ケア」と「器質的ケア」の2種類に分類されます。
・機能的口腔ケア
口唇や頬、舌のマッサージ、嚥下訓練、発音練習などを通じて、口腔機能の維持・回復を目指すケアです。継続的に実施することで、食事や会話が困難になるリスクを軽減し、生活の質(QOL)の向上につながります。
・器質的口腔ケア
歯磨きやうがい、舌の清掃などにより、歯・歯肉・舌の表面に付着した汚れや細菌を除去するケアです。
これにより、歯周病、誤嚥性肺炎、口臭などの予防が可能となり、咀嚼や嚥下機能の改善も期待されます。
【口腔ケアの効果】
適切な口腔ケアを行うことで、以下のような効果が期待されます。
・虫歯・歯周病の予防
細菌の数を減らすことで、虫歯や歯周病などの感染症を予防します。
また、歯周病が進行すると入れ歯が安定しにくくなるため、その予防にもつながります。
・唾液分泌の促進
口腔内を清潔に保ち、唾液腺を適度に刺激することで、唾液の分泌が促され、口腔乾燥を防ぐことができます。
・口臭の改善
口臭の主な原因は、食べかすや歯垢、虫歯などに潜む細菌です。
口腔ケアによりこれらを除去し、唾液の分泌を促すことで、口臭を抑える効果が得られます。
・味覚の改善
舌苔の除去と、唾液の分泌の促進により、味覚が改善されることがあります。
その結果、食欲の回復や低栄養・脱水の予防にもつながります。
・認知症の予防
咀嚼や発話に必要な口腔周囲筋を刺激することで、脳の活性化が期待されます。
特に「噛む」動作は、記憶を司る「海馬」の神経活動を促進するとされ、認知症の予防につながる可能性があります。
実際、よく噛める人は噛めない人に比べて、認知症の発症リスクが1.5倍低いとの報告もあります。
・誤嚥性肺炎の予防
口腔内の細菌が多いと、食物や唾液を誤って気道に飲み込んだ際に肺に入り、肺炎を引き起こすことがあります。
口腔内を清潔に保つことで、このリスクを大きく減らすことができます。
・心疾患の予防
歯周病菌が血流に侵入すると、動脈硬化を進行させ、心筋梗塞や狭心症などのリスクを高めることが知られています。
そのため、口腔ケアは心臓病の予防にもつながります。
・糖尿病の予防・改善
歯周病菌による炎症や菌の侵入は、インスリンの働きを妨げ、血糖コントロールが悪化させる可能性があります。
口腔ケアにより歯周病を抑えることが、糖尿病の予防や症状の改善に寄与します。
・感染症・発熱の予防
口腔内には、黄色ブドウ球菌や肺炎桿菌 (はいえんかんきん)など、感染症の原因となる細菌が存在します。
口腔ケアを徹底することで、これらによる全身感染の予防効果も期待されます。