2025.07.30
相談員ブログ
介護保険における車いすの利用について
介護が必要な高齢者の生活を支えるために、介護保険制度では福祉用具の貸与(レンタル)や購入が認められています。その中でも「車いす」は移動に困難を抱える方にとって欠かせない福祉用具の一つです。ここでは介護保険制度を通じた車いすの利用について、対象者、例外、貸与と購入の違い、そして制度上の考え方を解説します。【車いすは「貸与」の対象】
介護保険では、車いすは原則として「福祉用具貸与」の対象品目であり、介護保険の認定を受けた要介護者が、必要に応じてレンタルできる仕組みです。貸与の対象となる車いすには、一般的な自走式のものや、介助者が操作する介助式、電動式などがあります。さらに、「車いす付属品」(クッション、フットサポート、背もたれなど)も貸与対象に含まれます。
【原則として要介護2以上が対象】
車いすの貸与は、原則として要介護2以上の方が対象です。これは、要支援1・2および要介護1の方には貸与が認められていないことを意味します。要介護2以上では、移動に対する支援の必要性がより高いため、制度上も妥当とされます。
【例外的に要介護1以下でも利用できる場合】
要介護1や要支援の方であっても、例外的に車いすの貸与が認められるケースがあります。これは「例外給付」と呼ばれ、利用者の心身の状態によっては、要介護度にかかわらず必要性が認められる場合に限り、保険給付の対象とされる仕組みです。
たとえば、要介護1の方であっても、病気やケガの影響で一時的に歩行が困難な場合や、認知症などによって転倒のリスクが高い場合など、安定した移動手段が必要と判断されるケースが該当します。
この例外給付を受けるには、ケアマネジャーの判断に基づいて医師の意見書などを添えて申請し、市区町村(保険者)の審査を受ける必要があります。運用の基準は自治体によって異なるため、詳細は地域の介護保険担当窓口などに確認することが大切です。
【なぜ介護保険での車いすの「購入」が認められていないのか】
介護保険制度において、車いすの購入が原則として認められていない背景には、いくつかの制度的・実務的な理由があります。
まず、利用者の身体状況は時間の経過とともに変化しやすく、それに伴い適した車いすの種類や機能も変わる可能性が高いためです。たとえば、当初は自走式で対応できた方が、数カ月後には介助式や電動式への変更が必要になることもあります。
このような変化に対応するためには、柔軟に機能の変更が可能なレンタル制度の方が実用的です。一方、購入した場合は状態変化に応じて買い替えが必要となり、経済的な負担が大きくなりやすいという課題があります。
さらに、レンタルであれば、修理やメンテナンスが貸与事業者のサービスに含まれており、安全面でも安心して利用できるという利点があります。
こうした理由から、介護保険では車いすの購入は介護保険の対象外とされ、貸与による提供が原則となっています。
【利用手続きと費用負担】
介護保険で車いすを利用するには、まず介護認定を受けている必要があります。そのうえで、担当のケアマネジャーと相談し、ケアプランに車いすの利用を位置付けます。福祉用具貸与事業所を通じて車いすを借りることになり、利用者は費用の1割(一定以上の所得がある場合は2~3割)を自己負担します。
例外給付による貸与を希望する場合も、まずはケアマネジャーに相談し、医師の意見書の取得や市区町村への申請などを行う必要があります。これには一定の期間を要する場合があるため、早めの対応が推奨されます。
【貸与と購入のメリット・デメリット】
制度上、車いすの購入は介護保険の給付対象外ですが、実際には全額自己負担で購入する方もいます。以下にそれぞれの特徴を整理します。
[貸与のメリット]
・身体状況の変化に応じて機能の変更が可能
・故障時の修理や交換が迅速
・介護保険の適用により自己負担が軽減(1~3割)
[貸与のデメリット]
・自分の所有物ではないため、長期的な使用に不向きなこともある
・長期利用では、購入より費用がかさむ場合もある
[購入のメリット]
・個人の体格や好みに合わせてカスタマイズが可能
・長期的に使用する場合、結果的に費用を抑えられる場合もある
[購入のデメリット]
・介護保険が適用されないため全額自己負担
・修理・メンテナンスが自己責任
・身体状況の変化に対応しづらい(再購入の可能性あり)