2025.10.22
相談員ブログ
肺がんについて
日本は肺がんの年間新規患者数が非常に多く、男性ではがんによる死亡数の第1位、女性でも上位を占める深刻な病気です。肺がんは、肺の細胞が異常に増殖し、制御不能となった「がん細胞」が塊をつくる病気で、呼吸器である肺の働きに大きな影響を及ぼします。
肺は、空気中から酸素を取り込み、体内の不要な二酸化炭素を排出するという、生命維持に欠かせない役割を担っています。この重要な臓器の細胞ががん化すると肺の機能が徐々に低下し、さまざまな症状を引き起こします。しかし、肺がんの初期段階では自覚症状が乏しいため、発見が遅れやすいのが特徴です。
【肺がんの種類】
肺がんは、その細胞の性質(組織型)によって大きく「非小細胞肺がん」と「小細胞肺がん」に分類されます。
[非小細胞肺がん(NSCLC)]
肺がん全体の約8~9割を占める最も一般的なタイプです。進行が比較的ゆるやかで、さらに「腺がん」「扁平上皮がん」「大細胞がん」に分けられます。
・腺がん:肺がんの中で最も多く、特に非喫煙者や女性に多く見られます。肺の外側(末梢部)に発生することが多いです。
・扁平上皮がん:喫煙との関連が強く、肺の中心部にある太い気管支にできやすいタイプです。
・大細胞がん:比較的まれで、明確な組織型を持たず、進行が速い傾向があります。
[小細胞肺がん(SCLC)]
肺がん全体の約1割を占めます。喫煙との関連が非常に強く、進行が速く、早期から全身に転移しやすいのが特徴です。一方で、化学療法や放射線療法に比較的反応しやすいという性質もあります。
【肺がんの原因とリスク】
肺がんの最大の原因は、やはり喫煙です。喫煙者が肺がんを発症するリスクは、非喫煙者に比べて数倍から数十倍高いと報告されています。タバコの煙に含まれる有害物質が肺の細胞に直接的なダメージを与えるためです。
また、喫煙者の煙を吸い込む受動喫煙もリスクを高めます。
さらに、大気汚染物質(PM2.5など)やアスベスト、ヒ素、クロムなどの化学物質への長期暴露も肺がんの原因となることがあります。
近年では、特定の遺伝子変異も肺がんの発症に関与していることも明らかになっています。
【肺がんの主な症状】
初期の肺がんでは症状が出にくいため、定期的な健康診断や肺がん検診が重要です。病気が進行すると、以下のような症状が現れることがあります。
・しつこい咳や痰:風邪でもないのに2週間以上咳が続く場合は注意が必要です。
・血痰(けったん):痰に血が混じる症状で、肺がんの代表的なサインの一つです。
・息苦しさや息切れ:がんが気道を塞いだり、肺の機能を低下させたりすることで起こります。
・胸の痛みや背中の痛み:がんが胸壁や神経にまで広がると、痛みを感じます。
・全身の症状:食欲不振、体重減少、全身の倦怠感などがみられることもあります。
これらの症状は他の病気でも起こるため、早めの受診が大切です。
【肺がんのステージ(病期)分類】
肺がんの進行度はステージⅠからⅣまでの4段階に分けられます。
これは、がんの大きさ、リンパ節への広がり、そして他の臓器への転移の有無によって決まります。
・ステージⅠ:がんが肺の一部に現局している段階。手術で完全に切除できる可能性が高く、治癒が期待できます。
・ステージⅡ:がんがやや大きくなったり、近くのリンパ節に広がっている段階。手術が主体ですが、再発予防ために術後に抗がん剤を併用することがあります。
・ステージⅢ:がんが肺の広い範囲や隣接する臓器、複数のリンパ節に広がっている段階。手術単独では治療が難しく、化学療法や放射線治療を組み合わせた集学的治療が行われます。
・ステージⅣ:がんが脳・骨・肝臓などの他臓器に転移した段階です。完治は難しいものの、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬の登場により、症状の緩和や延命が可能になっています。
【診断と治療法】
診断には、胸部X線やCTスキャンなどの画像検査が用いられます。
がんが疑われる場合には、痰の細胞診や気管支鏡検査、CTガイド下生検などで組織を採取し、病理検査で確定診断を行います。
治療法は、がんの種類とステージによって異なります。
[手術療法]
主にステージⅠやⅡの早期肺がんが対象。がんを含む肺の一部(葉切除など)を切除します。
[放射線療法]
高エネルギーの放射線でがん細胞を破壊します。手術が難しい場合や、転移した病変の症状緩和にも用いられます。
[薬物療法]
抗がん剤(化学療法)、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬などがあり、がんの性質に応じて選択されます。
・化学療法:全身のがん細胞に作用し、特に小細胞肺がんで効果が高いです。
・分子標的薬:特定の遺伝子変異を持つがん細胞を選択的に攻撃し、副作用が比較的少ないのが特徴です。
・免疫チェックポイント阻害薬:がんが免疫の攻撃から逃れる仕組みを解除し、体の免疫力でがんを抑える治療です。近年の肺がん治療に大きな進歩をもたらしました。
これらの治療法は、患者さんの全身状態やがんの特性に応じて、単独または組み合わせて行われます。
【予防と検診の重要性】
肺がんの最大の予防策は禁煙です。喫煙を続けるほどリスクは高まるため、できるだけ早く禁煙することが重要です。また、受動喫煙を避けることも肺がん予防につながります。
さらに、早期発見のためには定期的な肺がん検診が欠かせません。特に40歳以上で喫煙歴のある人は、胸部X線検査や低線量CT検査を定期的に受けることが推奨されています。
早期に発見できれば、治療の選択肢が広がり、完治の可能性も高まります。自分の健康を守るためにも、積極的に検診を受けることが大切です。