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2025.10.24
相談員ブログ

医療リハビリと介護リハビリについて

【医療リハビリの基本的な目的】
医療リハビリテーション(以下、医療リハビリ)は、病気やケガによって失われた身体的・精神的な機能をできる限り改善し、再び日常生活や社会生活へ戻ることを目指すものです。たとえば脳卒中の後遺症で麻痺が残った場合、立つ・歩く・話すなどの基本的な動作をできる限り取り戻すために集中的に行われます。
医療リハビリの特徴は、医師の指示のもと、医学的な根拠に基づいて実施される点です。単なる体操や運動ではなく、安全管理や回復の可能性を考えた上で、リハビリテーション専門職が計画的に支援します。

【医療リハビリの種類】
医療リハビリにはいくつかの種類があります。
・理学療法(PT):主に歩行や起き上がり、関節の動きなど、基本的な動作能力を回復・改善する訓練。ストレッチや筋力強化、バランス練習などが含まれます。
・作業療法(OT):食事や着替え、家事など、応用的な生活動作の回復を目指します。さらに趣味活動や社会参加を取り戻す支援も役割に含まれます。
・言語聴覚療法(ST):言葉が出にくい、飲み込みにくいなど、言語機能や嚥下機能の改善を図ります。会話の訓練や食事に関する指導も大切な要素です。
このように医療リハビリは、対象となる機能に応じて分野があり、それぞれが連携して患者を支えます。

【医療リハビリの段階】
医療リハビリには、症状や回復の時期に応じて段階が存在します。
①急性期リハビリ:発症や手術直後、できるだけ早期に始めて合併症を防ぐ段階。ベッド上での関節運動や呼吸訓練などを行います。
②回復期リハビリ:ある程度病状が安定した時期に、集中的な機能訓練を目指す段階。リハビリ専門病院(回復期リハビリテーション病棟)では、1日最大3時間程度の訓練が行われます。
③維持期リハビリ:回復が頭打ちになった後も、再び機能が失われないように継続する段階。外来や訪問リハビリ、介護保険による通所リハビリ(デイケア)などに移行して継続されることが多いです。

【医療リハビリの重要性】
医療リハビリは単に体の機能を回復させるだけではなく、患者が再び社会へ戻り、自分らしい生活を送る基盤をつくります。たとえば仕事に戻るために必要な体力や動作を養う、家庭内で役割を果たせるようにする、といった具体的な目標にもつながります。
また、廃用症候群(使わないことで筋肉や関節が弱ってしまう状態)を防ぐことも重要です。特に急性期からリハビリを始める意義は、後遺症を最小限にし、その人の将来の生活の質に直結します。

【介護リハビリの位置づけ】
介護リハビリは、医療リハビリの後を引き継ぎ、主に高齢者や慢性疾患を抱える人が対象になります。目的は、失われた機能を大きく改善することよりも「残された機能を守り、生活を続ける力を保つこと」です。体の衰えは加齢とともに避けられない部分もありますが、介護リハビリに取り組むことで、衰えを穏やかにし、できることを長く続けられるようになります。

【残存機能の維持の大切さ】
介護リハビリの核となる考え方が「残存機能の維持」です。これはすでにできなくなったことを無理に取り戻すよりも、「まだできることをそのまま続けられるように守る」考え方です。
例えば、食事を自分で口に運べる人は、少し時間がかかっても自分で行うことを尊重することで、その能力を失わずに済みます。歩行が可能であれば安全に見守りながら自分の足で生活できるようにすることが重要です。このように小さな「できる」を大事に積み重ねることで、自立度と生活の満足度が高まります。
さらに、この維持は心の健康とも深く結びつきます。自分で行えるという体験は「まだ自分は生活を続けられる」という自信につながり、生きがいや意欲を支えます。

【生活リハビリという実践】
介護リハビリでは、生活そのものをリハビリの場とみなす「生活リハビリ」が大切にされます。特別な運動の時間を設けなくても、日常動作を工夫することで訓練が可能です。
・食事の場面:自分でスプーンを持つ、数口でも自力で口に運ぶことを続ける。これによって嚥下機能や手の動きが刺激され、食べる力の維持につながります。
・移動や起き上がり:完全な歩行が難しくても、ベッドから車いすへの移乗を自分の力で少しでも行うことが練習となります。立ち上がり動作を毎日繰り返すことは、下肢の筋力低下を防ぐ効果があります。
・整容や更衣:ボタンを留める、タオルで顔を拭くといった部分的な動作を本人に任せることがリハビリになります。
・レクリエーションや共同生活:塗り絵や軽い体操、歌唱などの活動は、手や体を動かすリハビリとして役に立ちます。さらに、他者との交流は意欲を高め、生活全体に前向きな効果をもたらします。
このように、自立度が低下しても「すべてやってもらう」より「できることは自分でする」ことに価値があるのです。生活の中で少しずつ体と心を使うことで、残存機能の維持が可能になります。

【介護リハビリの広がる意義】
介護リハビリは単に身体機能を保つという目的にとどまらず、介護を受ける人と支える人の双方に影響を与えます。本人ができることを少しでも維持できれば、介護する側の負担も減り、生活のゆとりや人間関係の円滑さにもつながります。また、継続的なリハビリは「寝たきりの予防」「転倒防止」「認知症進行の抑制」といった広い効果も期待されます。
さらに、介護リハビリは、生活の質(QOL)を重視した「生きる支援」としての役割を持つことが特徴です。

【医療リハビリと介護リハビリの連続性】
両者は明確に目的が異なるものの、患者や高齢者の一生の中では互いに連続しています。医療リハビリで改善を図り、その後の生活を介護リハビリで支えるという流れは、切れ目のない支援のあり方です。医療機関と介護事業所の情報共有や地域包括ケアの仕組みを通じて連携することが重要です。医療と介護が連携して取り組むことで、本人ができる限り自分らしい生活を守れるようになるのです。
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