2025.10.31
相談員ブログ
老人福祉法・介護保険法・高齢者住まい法について
【日本の高齢者福祉を支える三つの大切な法律:施設とサービスの関係】日本の高齢者の生活と安心を支える仕組みは、「老人福祉法」「介護保険法」「高齢者住まい法」という三つの柱となる法律で成り立っています。これらの法律は、それぞれ「福祉の土台」「介護サービスの仕組み」「安心できる住まい」という異なる役割を持ち、高齢者向けの施設やサービスに密接に関わっています。
以下では、それぞれの法律がどのような目的でつくられ、私たちの生活にどのように関係しているのかを説明します。
【老人福祉法:困った人を助ける“福祉の土台”】
老人福祉法は1963年(昭和38年)に制定されました。日本が高齢社会を迎える前から、高齢者の生活を社会全体で支えるための基本的な仕組みを定めた法律です。経済的な理由や家庭の事情などで自宅での生活が難しい高齢者を公的に支援することを目的としています。
[役割と施設]
・困ったときの助け合い:高齢者の生活相談や福祉サービスの提供、保護などを通して生活の安定を図ることが基本的な役割です。
・公的施設の設置:養護老人ホームや軽費老人ホーム(ケアハウス)などの公的福祉施設を設けるための基準を定めています。特別養護老人ホームもこの法律で定められた「老人福祉施設」の一つです。
・民間施設のルール:民間が運営する有料老人ホームもこの法律に基づき、自治体への届け出が義務付けられています。利用者が不当な扱いを受けないよう、運営の最低基準を設けているのが特徴です。この法律は、高齢者を社会全体で支援するための「福祉の土台」といえます。
【介護保険法:介護を社会全体で支える仕組み】
介護保険法は2000年(平成12年)に施行されました。急速な高齢化により介護の負担が大きくなったことを背景に、「家族だけに頼らず、社会全体で介護を支える」制度を築くことを目的としています。
40歳以上の国民が保険料を納め、介護が必要になった際に費用の一部(原則1~3割)を自己負担するだけで介護サービスを利用できる仕組みです。
[役割と施設]
・要介護認定を受けて利用:介護が必要だと認められた人が「要介護認定」を受けることで、訪問介護やデイサービス、施設への入所などの介護保険サービスを利用できます。
・介護保険の対象施設:介護保険法に基づき、「介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)」「介護老人保健施設(老健)」「介護医療院」「認知症対応型共同生活介護(グループホーム)」などが定められています。
・民間の施設との関係:民間の介護付有料老人ホームも、介護保険法の指定を受けることで、入居者に対して施設内で介護保険サービスを直接提供できるようになります。
【高齢者の住まい法:安心できる「住まいの」のルール】
高齢者住まい法(正式名称:高齢者の居住の安全確保に関する法律)は、2001年に制定され、2011年に大幅な改正が行われました。この法律は、高齢者が安全に、そして安心して住み続けられる住宅を増やすことを目的としています。「住宅」に焦点を当て、バリアフリー化や見守りなど、生活支援の仕組みを整えた住まいづくりを促進しています。
[役割と施設]
・賃貸住宅の安全基準:「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」が代表的な制度です。バリアフリー構造であることに加えや、安否確認、生活相談といった基本的なサービスを提供することが義務付けられています。
・介護サービスは基本的に外部利用:サ高住はあくまで「住宅」であり、介護サービスが必要になった場合は、入居者が外部の訪問介護事業者などと個別契約してサービスを利用します。
・「住まい」と「施設」の違い:老人福祉法に基づく有料老人ホームが「施設」としての側面が強いのに対し、サ高住は「住まい」としての側面が強いのが大きな違いです。
【まとめ:三法による多角的な高齢者支援体制】
日本の高齢者支援は、
「老人福祉法」が福祉施設や有料老人ホームなどの基本的な仕組みを定め、
「介護保険法」が介護サービスの費用負担と提供体制を支え、
「高齢者住まい法」が安全で安心して暮らせる住まいの整備を進める、
という三本柱で構成されています。
この三法の連携より、自立して生活できる高齢者から、手厚い介護を必要とする方まで、それぞれの状態に応じて最適な「住まい」と「ケア」を組み合わせることが可能です。
施設や住まいを選ぶ際には、その場所がどの法律に基づいて運営され、どのような支援体制があるのかを理解しておくことが大切です。