2025.11.04
相談員ブログ
ステーキハウス症候群について
ステーキハウス症候群とは、よく噛まずに飲み込んだ食べ物が食道につかえてしまうことで、突然、胸の痛みや食べ物が飲み込めないといった症状を引き起こす状態を指します。症状が急に現れた場合は迅速な対応が求められます。【名前の由来】
「ステーキハウス症候群」という名前は、1960年代ににアメリカの「ステーキハウス」レストランで、固い肉をよく噛まずに飲み込んで食道に詰まらせた事例が報告されたことに由来します。
肉だけでなく、餅や豆類、パンなども原因となるため、この名前はあくまで俗称です。医学的には「食道異物」や「急性食道閉鎖」と呼ばれます。
【なぜ起こるのか】
食道は、食物を口から胃へ運ぶ筋肉の管です。通常、この食道は「蠕動運動(ぜんどううんどう)」という波のような動きで食物を胃に送り込みます。しかし、十分に噛んでいない大きな塊を飲み込むと、この動きだけでは食物を運べず、食道の生理的な狭窄部で詰まってしまうことがあります。
高齢者の場合は、咀嚼力や唾液の分泌が低下していることが多く、食物をうまく噛み砕いたり、唾液と混ぜ合わせたりすることが難しくなるため、特に発症リスクが高まります。
また、もともと食道が狭くなっていたり、逆流性食道炎や食道がん、アカラシア(食道の筋肉の動きが悪くなる病気)といった持病がある場合は、さらに症状が重くなることがあります。そのため、何度も繰り返す場合は、背景に病気が隠れていないか、精密検査を受けることが重要です。
【主な症状】
ステーキハウス症候群では、次のような症状が現れることがあります。
・食後すぐの胸の詰まり感
・食べ物や唾液が飲み込めない
・吐き気や嘔吐
・胸の痛み
特に高齢者の場合、胸の痛みを訴えることから、心筋梗塞などと間違われて救急搬送されるケースも少なくありません。食事の後に急な痛みが起きた場合は、心臓の病気か食道に詰まったものか、注意深く判断する必要があります。
【対処法と治療】
軽い場所には自然に食べ物が胃へ落ちることもありますが、水やお茶を無理に飲んで流そうとするのは危険です。
食道を傷つけたり、詰まりが悪化したりする恐れがあります。
唾液も飲み込めない、胸の痛みが強い、息苦しいなどの症状がある場合は、すぐに医療機関を受診してください。
病院では。内視鏡(胃カメラ)で詰まった食べ物を直接取り除く治療が行われます。
対応が遅れると、食道に傷や潰瘍ができたり、穴が開く「穿孔(せんこう)」などの合併症につながる可能性があるため、早期の処置が重要です。
【高齢者とステーキハウス症候群】
高齢者は、歯の状態や咀嚼・嚥下機能の低下、基礎疾患(食道や神経疾患など)、唾液分泌の減少により発症リスクが高くなります。
また、認知症などで自分の症状をうまく訴えられない場合、つかえたまま放置されて重症化することもあります。
介護の現場は家庭では、食事中の見守り、食材の大きさや硬さの調整、ゆっくりよく噛んで食べてもらう工夫が重要です。
必要に応じて、言語聴覚士(ST)による嚥下機能の評価や訓練を受けることも有効です。
【予防のポイント】
ステーキハウス症候群を防ぐには、次のような点を心がけましょう。
・一口の量を小さくし、よく噛んでから飲み込む。
・肉や餅など、固かったり粘り気の強い食品は注意する。
・入れ歯が合っていない場合は歯科で調整する。
・食道の病気がある場合は、定期的に医療機関を受診する。
・早食いを避け、落ち着いた環境でゆっくり食事をとる。
高齢者は身近な人や介護者が事前に予防策を講じることも重要です。もし食事中に胸痛や嚥下障害を感じたら、無理に食べ続けたり一気に水分を摂らず、落ち着いて医療機関に相談してください。
【まとめ】
ステーキハウス症候群は、「食べ物の塊が食道に詰まってしまう食道閉鎖の一種」です。
原因の多くは、よく噛まず急いで飲み込むことにあります。
特に高齢者や食道の病気を持つ方は注意が必要です。予防の基本は「よく噛み、ゆっくり食べる」こと。
違和感を覚えた際は、早めに医療機関へ相談するようにしましょう。