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2025.11.14
相談員ブログ

加齢による物忘れと認知症による物忘れの違いについて

加齢による物忘れ(生理的健忘)と認知症による物忘れ(病的な健忘)は、高齢者によく見られる現象ですが、その本質的なメカニズム、日常生活への影響、忘れる内容の質、進行の仕方などが大きく異なります。これらの違いを正しく理解し、適切な対応と早期発見につなげることが極めて重要です。

【「物忘れ」とは何か】
[加齢による物忘れ(生理的健忘)]
加齢に伴い、脳の神経細胞の機能は少しづつ低下します。これは、記憶を脳から引き出す能力(検索機能)や、注意を集中する能力が衰えることによって生じる、誰にでも起こりうる自然な老化現象であり、病気ではありません。記憶そのものが失われるわけではなく、新しい情報も時間をかければ覚えることは可能です。生活の中で多少の不便を感じることはあっても、日常生活に大きな支障をきたすことは通常ありません。

[認知症による物忘れ(病的な健忘)]
認知症は、脳の病気や障害(最も多いのはアルツハイマー型認知症)によって、記憶を司る神経細胞が破壊されることで起こる状態です。特に、新しい情報を記憶として脳に刻み込む機能(記銘力)が障害されることが特徴です。その結果、記憶が定着せず、数分前の出来事でも忘れてしまいます。単なる加齢による記憶力の低下とは異なり、判断力・理解力・見当識(時間や場所の把握)など、他の認知機能も低下します。この機能低下が日常生活や社会生活に支障をきたすレベルに達すると、「認知症」と診断されます。


【物忘れの「質」と「内容」の決定的な違い】
加齢による物忘れと認知症による物忘れは、「何を、どのように忘れるか」という点で決定的な違いがあり、両者を見分けるうえでの最も重要なポイントとなります。

[加齢による物忘れの特徴]
加齢による物忘れは、体験したことの「一部」を忘れるのが一般的です。例えば、「昨日食べた夕食のメニュー」や、「取引先の担当者の名前」といった細部を思い出せないという現象です。しかし、その出来事自体(夕食を食べた事実や、その人と会った事実)は、しっかりと記憶に残っています。
この場合、忘れていることについて本人は自覚があります。自分が忘れたことを自覚しているため、「あれ、何を食べたっけ?」「情けない」といった不安や困惑の様子が見られます。また、周囲から少しのヒントをもらえれば、忘れていた内容を思い出すことができることが多いのも特徴です。これは、記憶が定着しているものの、一時的に検索機能が低下している状態を示します。

[認知症による物忘れの特徴]
一方、認知症における物忘れの場合、忘れるのは体験したことの「全体そのもの」です。たとえば、「昨日夕食を食べたという事実自体」を丸ごと忘れてしまうといったことが見られます。これは、新しい情報が脳にそもそも記憶として定着していないために起こります。その結果、「まだご飯を食べていない」と何度も訴える、といった同じ質問や行動の繰り返しが見られます。
記憶そのものが欠損しているため、本人は忘れていることについて全く自覚がありません。自覚がないため、忘れたことを指摘されても理解できず、自分の記憶と食い違う周囲の発言に対し、時には「嘘をついている」「物を盗まれた」などと他者を疑う言動(妄想)につながることもあります。また、記憶が定着していないため、周囲からヒントをもらっても思い出せません。特に直近の出来事ほど忘れやすく、昔の記憶は比較的保たれていることが多いのが特徴です。

【進行と日常生活への影響の違い】
[症状の進行の仕方]
・加齢による物忘れ
症状の進行は極めて穏やかであり、日常生活に大きな問題を引き起こすことは稀です。
・認知症による物忘れ
症状の進行は比較的速く、年単位で記憶や他の認知機能の低下が顕著になり、進行度に応じて日常生活への支障が増していきます。進行速度は原因となる認知症の種類によっても異なります。

[日常生活への影響]
・加齢による物忘れ
判断力や理解力は保たれており、日常生活は概ね自立して行えます。
・認知症による物忘れ
記憶障害だけではなく、実行機能障害(計画立てる能力)や見当識障害(時間・場所・人物の認識障害)などが伴うため、日常生活に顕著な支障をきたします。例えば、料理の手順が分からなくなる、お金の計算や管理ができなくなる、慣れた道でも迷子になるなど、生活全般にわたって介助やサポートが必要となります。

【精神面・行動の変化と受診の目安】
[精神・行動の変化]
・加齢による物忘れ
本人の性格や感情に大きな変化は見られず、むしろ物忘れへの不安を感じることが多いです。
・認知症による物忘れ
記憶障害以外に、以前の性格とはかけ離れた変化や、周辺症状(BPSD)と呼ばれる行動や心理面の症状を伴うことがあります。例えば、怒りっぽくなる、疑い深くなる(物盗られ妄想)、無気力になる、といった変化が見られます。場合によっては、昼夜逆転や徘徊、不安の高まりといった行動変化も現れます。

[受診を検討する目安]
加齢による物忘れか認知症かの判断は専門家による診断が必要です。以下のサインが見られた場合は、「物忘れ外来」や「精神科」「精神内科」などの専門医への早期受診が強く推奨されます。
・体験したことそのものを丸ごと忘れている(ヒントでも思い出せない)。
・同じ話を何度も繰り返すことが増え、指摘しても忘れている自覚がない。
・料理や買い物の手順など、今までできていたことが急にできなくなった(実行機能の低下)。
・日付や場所、季節が分からなくなる(見当識障害)。
・性格が変化したり、怒りっぽい、疑い深いといった行動の変化が見られる。

早期に専門医の診断を受けることで、原因疾患の特定や治療方針、適切なケア体制の構築が可能になります。薬物療法やリハビリ、家族への支援によって、認知症の進行を穏やかにしたり、生活上の困りごとを軽減したりすることが期待されます。
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