2026.01.08
相談員ブログ
介護保険で購入できる「特定福祉用具」:対象品目と利用のポイント
【特定福祉用具とは】住み慣れた自宅での生活を、いかに安全に、そしてその人らしく継続していくか。在宅介護において、これは非常に大きなテーマです。こうした日々の暮らしを支える仕組みの一つに、介護保険制度を利用して購入できる「特定福祉用具」があります。
今回は、生活の質を左右するこの「特定福祉用具」について、制度の仕組みや活用のポイントを整理して解説します。
【「レンタル」ではなく「購入」となる理由】
介護保険で利用できる福祉用具の多くは「レンタル(貸与)」が基本ですが、一部の種目は「購入」の対象となっています。これには、福祉用具ならではの特性が関係しています。
衛生面への配慮: 入浴や排泄など、身体に直接触れる機会が多いもの。
個別性の尊重: 使用者の体格や身体状況に合わせて、個別に用意することが望ましいもの。
これらは他者との共有や再利用が難しいため、新品を購入して使用する仕組みとなっています。 支払いは、一度全額を支払った後に自治体へ申請し、自己負担分(1〜3割)を除いた額が払い戻される「償還払い」が基本です。自治体によっては、最初から自己負担分のみの支払いで済む制度を設けている場合もあり、利用者の負担を軽減する工夫がなされています。
【日常を支える主な対象種目】
特定福祉用具として定められているのは、主に次のような道具です。
・腰掛け便座(ポータブルトイレなど)
和式トイレを洋式化するものや、立ち座りの動作をサポートする便座です。排泄は毎日のことであるため、この環境を整えることは、室内での転倒リスクを減らす大きな一歩となります。
・入浴補助用具
シャワーチェア、浴槽内いす、浴槽手すりなどが含まれます。滑りやすい浴室での安全を確保し、本人が自立して入浴できる可能性を広げるとともに、介助者の負担軽減にも貢献します。
・簡易浴槽
浴室への移動が困難な場合に、自室などで使用できる組み立て式の浴槽です。住環境の制限があっても、入浴によるリフレッシュや清潔保持を可能にします。
・自動排泄処理装置の交換可能部品
装置の本体はレンタルですが、尿や便が直接触れるチューブやタンクといった消耗品は、衛生上の理由から購入の対象となります。
・移動用リフトの「つり具(スリング)」
身体を吊り上げるリフトに使用するシート部分です。直接肌に触れるため、お一人おひとりに合わせた専用のものを用意します。
【利用の流れと「限度額」について】
導入を検討する際は、まずケアマネジャーへ相談することから始まります。
生活の課題に合わせて、福祉用具専門相談員と共に「身体状況や住環境に合致しているか」「正しく安全に使いこなせるか」を検討します。
ここで注意したいのが、介護保険で購入できる金額には上限があるという点です。年間(4月から翌3月まで)の支給限度基準額は10万円(税込)と定められています。この枠内であれば保険給付の対象となりますが、限度額を超えた分は全額自己負担となります。必要なものを計画的に選択することが、賢い活用のポイントです。
【道具が担う「セーフティネット」の役割】
特定福祉用具は、単なる便利な道具というだけではありません。立ち上がりや入浴といった日常の動作に潜む「思わぬ事故」を防ぐための、大切なセーフティネットの役割を果たします。
無理のない範囲で動作を補うことは、本人の自立心を守るだけでなく、支えるご家族の身体的・精神的なゆとりにもつながります。
【おわりに)】
特定福祉用具は、住み慣れた家で安心して過ごすための「具体的な工夫」を形にしたものです。 「何が必要か」を迷った際も、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員といった専門職が、それぞれの生活に合った提案を行ってくれます。
毎日の「できる」を大切に守り、健やかな暮らしを継続するために、こうした制度を上手に活用していきたいものです。