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2026.01.23
相談員ブログ

高齢者の食欲不振や元気のなさは、高カルシウム血症かも?

「カルシウム」と聞くと、多くの人は「骨を強くする」「健康に良い」といったポジティブなイメージを抱くでしょう。確かに、カルシウムは私たちの骨格を支える主役です。しかし、血液の中に目を向けると、そこには全く別の顔があります。

血液中のカルシウムは、心臓を規則正しく動かし、脳の指令を神経に伝え、筋肉を収縮させるための「精密な生命スイッチ」として機能しています。この濃度は、体内の仕組みによって極めて厳密に維持されていますが、何らかの理由でスイッチが入りっぱなしになり、濃度が高くなりすぎてしまうことがあります。これが「高カルシウム血症」です。これは単なる数値の異常ではなく、全身のシステムが誤作動を起こし、放置すれば命に関わることもある静かなる緊急事態なのです。

【なぜ、体内のバランスは崩れてしまうのか】
健康な体では、腸からの吸収、骨への蓄積、尿への排出という3つのルートが完璧なバランスを保っています。しかし、この精巧な維持機能が壊れてしまう主な原因には、大きく分けて2つのシナリオがあります。

1. 指揮官の暴走:副甲状腺機能亢進症
喉にある甲状腺の裏側には、米粒ほどの「副甲状腺」という小さな臓器が4つあります。ここから出るホルモンは、血液中のカルシウムが足りなくなると「骨からカルシウムを溶かし出せ」という命令を出す指揮官です。 もし、この臓器に腫瘍ができると、指揮官は四六時中、誤った命令を出し続けます。その結果、体を支えるべき骨から際限なくカルシウムが溶け出し、血液中に溢れ出してしまうのです。

2. 招かれざる破壊者:悪性腫瘍(がん)
がん細胞が骨に転移して直接骨を壊したり、あるいはがん細胞自体が副甲状腺ホルモンに似た物質を作り出したりすることで、血液中のカルシウムが急増します。がん患者の方が急に食欲を失ったり意識が混濁したりした場合、この病気が隠れていることが少なくありません。

その他、健康のためを思ったビタミンDサプリの過剰摂取や、長期の寝たきり生活で「骨に負荷がかからないため、骨が脆くなって溶け出す」といった状況でも起こり得ます。

【「なんとなく不調」に隠された全身のサイン】
高カルシウム血症の厄介な点は、症状が全身に及びながらも、その一つひとつが「どこにでもあるような不調」に見えてしまうことです。

消化器のトラブル カルシウム濃度が上がると胃腸の動きが鈍くなります。その結果、激しい食欲不振、胃のムカムカ、頑固な便秘といった症状が現れます。

脳と神経の不調 脳の電気信号が乱れるため、強いだるさ、集中力の低下、物忘れ、さらには周囲の状況が認識できなくなるような精神症状が出ることがあります。

泌尿器への影響 体は過剰なカルシウムを尿から捨てようとフル回転します。この際、水分も大量に排出されるため、尿の量が増え、異常に喉が渇きます。放置すると腎臓の中に石ができる「腎結石」や、腎機能の低下を招きます。

心臓への負担 心臓を動かすリズムが狂い、不整脈を引き起こすことがあります。最悪の場合、心停止に至る危険性も孕んでいます。

【高齢者の「加齢のせい」に潜む罠】
特に注意が必要なのが高齢者です。高カルシウム血症は、時に「老い」という仮面を被って現れるため、非常に見逃されやすい病気です。

「最近、食欲がなくて元気がない」「ぼーっとしていて物忘れが増えた」「一日中寝てばかりいる」

こうした変化を、周囲も本人も「年だから仕方ない」と片付けてしまいがちです。しかし、これらが実は高カルシウム血症による症状だったというケースは珍しくありません。 さらに高齢者は、もともと体内の水分が少なく、喉の渇きも感じにくいため、多尿による脱水が進みやすいリスクがあります。脱水になると血液が濃縮され、さらにカルシウム濃度が上がるという「悪化のループ」に陥りやすく、重症化するまで気づかれないこともあるのです。

【診断と治療:早期発見への道】
診断自体は非常にシンプルです。一般的な健康診断でも行われる「血液検査」でカルシウム値を測ることで分かります。ただし、カルシウムは血液中のタンパク質と結合しているため、正確な評価には特別な計算式を用いたり、活動的な型である「イオン化カルシウム」を調べたりすることがあります。

治療の第一歩は「脱水の改善」です。まずは点滴などで十分な水分を補い、尿とともにカルシウムを体外へ洗い流します。併せて、骨からカルシウムが溶け出すのを強力に抑える薬を使用します。これらはあくまで対症療法ですので、火を消し止めた後は、原因となった腫瘍や疾患に対する根本的な治療を並行して行うことが最も重要です。

【あなたの「気づき」が家族を救う】
高カルシウム血症は、初期には自覚しにくい病気ですが、放置すると全身の臓器にダメージを与え、最終的には意識障害などを引き起こす恐れがあります。

特に高齢のご家族がいる場合、「急に元気がなくなった」「つじつまの合わないことを言うようになった」といった変化を、単なる老化や認知症の進行と決めつけないでください。一度内科などで血液検査を受けてみることが、早期発見への一番の近道となります。

カルシウムは「骨の栄養」であると同時に、バランスを崩せば「毒」にもなり得る。この知識を持つことが、あなたと大切な家族を守る一歩になります。

もしご家族の様子で気になる点があれば、まずはかかりつけ医に「血液検査でカルシウム値も確認したい」と伝えてみるのはいかがでしょうか。
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