2026.03.17
相談員ブログ
高齢者の声がしゃがれるのはなぜ?年齢とともに起こる「声の変化」とその理由
高齢の方と話していて、「以前より声がかすれている」「少ししゃがれた声になった」と感じることはありませんか。「最近声が弱くなった」「ガラガラ声になった」とご自身で気づくこともあるでしょう。こうした変化を見ると「のどの病気では?」と心配になるかもしれませんが、実は加齢によって自然に起こる場合もあります。医学的には、このような加齢による声の変化を「老人性嗄声(ろうじんせいさせい)」と呼びます。
【声が出る仕組み】
声は、のどの奥にある声帯という器官が振動することで作られます。声帯は左右一対のひだのような形をしており、肺から送り出された空気が通ると振動して音が生まれます。
この声帯の動きや振動の状態によって、声の大きさや高さ、聞こえ方が変わります。そのため、声帯や呼吸の働きに変化が起こると、声の質も変わりやすくなるのです。
【声帯の筋肉が衰える】
高齢者の声がしゃがれやすくなる大きな理由の一つが、声帯の筋肉の衰えです。
声帯の内部には筋肉があり、声を出すときにはこの筋肉が働いて声帯をしっかり閉じます。声帯がきちんと閉じることで、空気の流れが安定し、張りのある声が出ます。
しかし加齢によって声帯の筋肉がやせてくると、声帯が完全に閉じにくくなることがあります。すると隙間から空気が漏れやすくなり、次のような変化が起こります。
・声がかすれる
・空気が抜けるような声になる
・声に張りがなくなる
といった変化が起こりやすくなります。
これは腕や脚の筋肉が年齢とともに細くなるのと同じように、声を作る筋肉にも加齢の影響が現れるためです。
【声帯が乾燥しやすくなる】
声帯の表面は粘膜で覆われており、適度に潤っていることでスムーズに振動します。
しかし高齢になると、粘膜の働きが低下したり、体が乾燥しやすくなったりすることで、のどが渇きやすくなることがあります。声帯が乾燥すると振動が滑らかにいかなくなり、ガラガラ声やかすれ声、あるいは「長く話すと声が出にくい」といった症状が出やすくなります。
また、水分摂取量の減少や口呼吸、空調の影響なども、のどの乾燥を招く要因となります。
【呼吸の力が弱くなる】
声は肺から送り出される空気の力で作られるため、呼吸も大きく関係しています。
高齢になり肺活量が低下したり、呼吸に関わる筋肉(呼吸筋)が弱くなったりすると、
・声が小さくなる
・一息で長く話すことが難しくなる
・声が途中で途切れやすくなる
といった変化が見られるようになります。
【男性と女性で声の変化は少し違う】
加齢による声の変化には男女差もあります。
一般的に、男性は声がやや高くなり、女性は声がやや低くなる傾向があります。
男性は声帯の筋肉がやせて薄くなることで声が高くなりやすく、逆に女性は閉経後のホルモン変化などの影響で声帯が厚くなり、声が低くなることがあります。そのため高齢になると、若い頃よりも男女の声の高さの差が小さくなることもあります。
【声のかすれが続くときは病気の可能性も】
ただし、声のかすれがすべて加齢によるものとは限りません。病気が原因で起こる場合もあります。
例えば次のような病気でも、声がかすれることがあります。
・声帯ポリープ
・声帯結節
・逆流性食道炎(胃食道逆流症)
・声帯麻痺
・喉頭がん
特に2~3週間以上声のかすれが続く場合は、耳鼻咽喉科で受診しましょう。
長引く嗄声は、その原因を確認することが大切です。
【声の衰えを防ぐためにできること】
年齢による声の変化を完全に防ぐことはできませんが、日常生活の中で気をつけることで声帯への負担を減らすことはできます。
例えば
・こまめに水分を摂る
・のどの乾燥を防ぐ(加湿など)
・普段から会話などで声を出す
・無理に大声を出さない
といったことが役立つとされています。
また最近では、高齢者を対象にした発声トレーニングや音声リハビリが行われることもあり、声の出しやすさが改善する場合もあります。
【声の変化も身体の老化の一つ】
高齢者のしゃがれ声は、声帯の筋肉の衰え、粘膜の変化、呼吸の力の低下など、いくつかの要因が重なって起こることが多いと考えられています。
つまり、声の変化も白髪や筋力低下と同じように、体の老化の一つの現れといえるでしょう。
ただし、急に声が変わったり、声のかすれが長く続いたりする場合には、病気が隠れている可能性もあります。気になるときには一度耳鼻咽喉科で相談してみることも大切です。
声は、その人らしさを表す大切なものです。年齢とともに変化する声の仕組みを知ることは、高齢者の体の変化を理解する一つの手がかりにもなるでしょう。