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2026.07.16
相談員ブログ

老人ホームの往診医はなぜ内科が多い?『内科』って何でも屋?

老人ホームの協力医療機関を見ると、往診医が「内科」となっていることがほとんどです。
「高齢者は心臓や肺、認知症など、さまざまな病気があるのに、内科だけで大丈夫なの?」
「内科って風邪や高血圧を診る診療科じゃないの?」
そんな疑問を持つ人もいるでしょう。
実は、老人ホームで活躍する内科医の役割は、想像以上に幅広いものです。

【内科は「臓器」ではなく「人全体」を診る】
整形外科は骨や関節、眼科は目、耳鼻咽喉科は耳や鼻など、それぞれ担当する部位が比較的はっきりしています。
一方、内科は体の中で起こる病気を幅広く診る診療科です。
風邪や肺炎、高血圧、糖尿病、心不全、便秘、脱水、感染症などはもちろん、「何となく元気がない」「食欲が落ちた」「熱がある」「息苦しい」「意識がぼんやりする」といった、原因が一つとは限らない症状にも対応します。
高齢者は複数の病気を抱えていることが多く、一つの症状の背景にいくつもの原因が隠れていることも珍しくありません。
だからこそ、全身を俯瞰して「今、この人の体に何が起きているのか」を総合的に考える内科医の力が必要になるのです。

【認知症も内科医の大切な仕事】
認知症というと精神科や脳神経外科を思い浮かべる人もいますが、老人ホームでは内科医が診療を担うことも少なくありません。
その理由は、認知症という病気「だけ」を診ているわけではないからです。
例えば、「急に認知症の症状が進んだ」と思っていても、実際には肺炎や尿路感染症、脱水、便秘、あるいは服用し始めた薬の副作用などが原因で、一時的に脳が混乱していることもあります。
認知症の悪化と思われた症状の裏に、別の「治療できる病気」が隠れていないかを見極めることも、内科医の重要な役割です。

【栄養チューブが抜けたら?】
老人ホームには、鼻から胃までチューブを入れて栄養を送る「経鼻経管栄養」を行っている方もいます。
このチューブは鼻から喉を通るため常に強い不快感を伴いやすく、「気持ち悪さから、ご本人が引っ張って抜いてしまう(自己抜去)」というトラブルが起こりやすいものです。
訪問診療(往診)を行う医師の中には、適切な位置への挿入を慎重に確認しながら、その場でチューブを再挿入して栄養を再開できる医師もいます。
(※施設の体制や安全面への考慮から、病院でレントゲン確認を行いながら対応することもあります)

【実はこんな医療処置まで行っている】
老人ホームの内科医は、診察や薬の処方だけをしているわけではありません。
訪問診療に力を入れている医師の中には、以下のような多様な医療処置に対応する人もいます。
・褥瘡の処置・管理
・尿道カテーテルの交換
・点滴や皮下注射
・インスリン注射の投与量調整
・胃ろうのチューブ交換
 等々
さらに、病気を治すことだけがゴールではありません。
病気による苦痛を和らげる「緩和ケア」や、住み慣れた施設で人生の最期を支える「看取り医療」まで担うことも少なくありません。
もちろん、これらをすべての内科医が一手に行うわけではなく、医師の専門性などによっても対応範囲は異なります。

【「何でも治す医師」ではなく「何でも最初に診る医師」】
もちろん、内科だけですべての病気を専門的に治療できるわけではありません。
心筋梗塞が疑われれば循環器内科、骨折なら整形外科、白内障なら眼科、手術が必要なら外科など、それぞれの専門医へつなぐことも重要な役割です。
厚生労働省も、地域の「かかりつけ医」に対して、日常的な診療や健康管理を行うだけでなく、健康上のさまざまな相談にのり、必要に応じて専門医へ紹介する役割を強く期待しています。
つまり老人ホームの内科医は、「何でも一人で治す医師」ではなく、「まず最初にしっかり診て、適切な医療のルートにつなぐ医師」なのです。

【「何でも屋」ではない。でも守備範囲はとても広い】
老人ホームの内科医は、体調の小さな変化を見逃さず、持病をコントロールし、認知症にも対応し、必要な医療処置を行い、ときには看取りまで支えます。
こうしたトータルな役割を担えるからこそ、多くの老人ホームでは内科医が協力医療機関の中心になっています。
内科は決して「何でも屋」ではありません。
しかし、高齢者医療という分野において、最も守備範囲が広く、頼りになる診療科の一つであることは間違いないでしょう。
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