2026.04.09
相談員ブログ
【別表7・8について第3回】病名ではなく「状態」で支える別表8の役割
【病名に関わらずサポートが受けられる「別表8」】前回までは、特定の難病や末期がんなど「病名」によって訪問看護が医療保険に切り替わる「別表7」について説明してきました。しかし、医療的なサポートを必要としているのは、特定の難病の方だけではありません。
例えば、高齢で足腰が弱っていて、重度の褥瘡に悩んでいる方や、自宅で点滴管理が必要になった方もいらっしゃいます。そうした「病名」ではなく、現在の「お体の状態」に着目して、手厚い看護が受けられるように定められたのが「別表8」というリストです。
【どのような「状態」が対象になるのか】
別表8には、具体的に以下のような処置や状態が並んでいます。 代表的なものとしては、「真皮を越える褥瘡(重度の床ずれ)」、「在宅自己注射(インスリンなど)」、「酸素吸入」、「カテーテルの管理」、「人工肛門(ストーマ)の管理」などです。また、これらに加えて「週3回以上の点滴が必要な状態」なども含まれます。
これらに該当する場合、訪問看護のあり方が大きく変わります。 ただし、別表8は「該当すれば自動的に医療保険になる」というものではありません。あくまで、特別訪問看護指示書の発行などと組み合わせて、医療保険による頻回な訪問看護を行う際の判断材料となるものです。
また、実際の適用にあたっては、これらの状態が「継続的に」必要であるかどうかを含め、主治医が総合的に判断します。
【「特別訪問看護指示書」という心強い仕組み】
「最近、急に食事が摂れなくなって体力が落ちてきた」「退院したばかりで、自宅での点滴や処置が不安だ」。そんな時に主治医から発行されるのが「特別訪問看護指示書」です。
この指示書が発行されると、要介護の方であっても、その期間中は訪問看護が医療保険で算定される扱いとなり、医師の指示に基づいて最大14日間、毎日でも訪問看護を受けることが可能になります。特に、別表8に該当するような処置が必要な場合には、こうした集中的な訪問が行われやすくなります。
通常、介護保険では訪問回数に制限がありますが、この期間に限っては、その制限を超えて集中的なケアが受けられるのです。
さらに、別表8に記載されている「真皮を越える褥瘡」や「頻回な点滴が必要な状態」などに該当する場合には、通常は月1回までとされているこの指示書を、例外的に月2回(最大28日間)まで発行することが認められています。つまり、状態が落ち着かない時期に、集中的に看護師の力を借りて立て直しを図ることができる仕組みなのです。
【「家での療養」を諦めないための防波堤】
別表8の役割は、いわば「在宅療養の防波堤」です。 例えば、重度の床ずれができてしまった時、これまでは「家での管理は難しいから入院しましょう」と言われていたかもしれません。しかし、別表8に基づいた訪問看護や特別訪問看護指示書を組み合わせれば、必要な時期に毎日看護師が傷口の洗浄や処置を行い、家族へケアの方法を細かく指導することができます。
点滴についても同様です。食事が摂れず脱水傾向になった際、この仕組みを活用し、医師の指示のもとで一定期間、集中的に看護師が点滴の管理に関わることで、入院せずに自宅で体調の立て直しを図ることが可能になる場合があります。
【家族だけで判断せず、専門家へ繋ぐために】
「うちの親は難病ではないから、毎日看護師さんに来てもらうなんて無理だ」と諦めてしまうのは早計です。別表8に該当するような医療的な課題がある場合、制度はそれをしっかりと支える準備を整えています。
大切なのは、ご本人の皮膚の状態や、食事・水分の摂取状況、あるいは排泄の管理などで「これまでと違う」と感じた時に、すぐに相談することです。その「変化」が別表8の状態に当てはまるかどうかは、主治医や訪問看護ステーション、ケアマネジャーと一緒に確認していくことができます。
ご家族が「医療のプロではないからできない」と悩む必要はありません。制度が認めている「状態」を正しく活用することで、家での暮らしをより安全で、より穏やかなものに変えていくことができるのです。
【別表8】
[生命維持・栄養のための「管(カテーテル)」]
・在宅中心静脈栄養法(IVH)
心臓に近い太い血管から、高カロリーな栄養剤を24時間流している状態。
・在宅成分栄養経管栄養法(胃ろう・経鼻栄養)
鼻や胃の穴から直接栄養を入れている状態。
・在宅自己導尿、人工肛門・人工膀胱(ストーマ)
自分で排泄が困難で、管での排出や袋の管理・皮膚ケアが必要な状態。
・在宅酸素療法・在宅人工呼吸療法
機械を使って酸素を取り込んだり、呼吸を助けたりしている状態。
・気管カニューレ
喉に穴を開けて管を通し、呼吸路を確保している状態。
・留置カテーテル
尿道に管を入れっぱなしにして、尿を袋に溜めている状態。
[頻繁な「処置」が必要な状態]
・在宅自己注射指導管理
インスリンなど、自分で注射を打つための指導や厳重な管理が必要な状態。
・点滴注射(週3回以上行う必要があると認められるもの)
脱水や栄養補給、薬剤投与のために、頻繁に針を刺して点滴している状態。
・真皮を超える褥瘡
いわゆる「床ずれ」が深く、皮下組織に達するなど重度で、継続的な処置が必要な状態。。
[特別な機器や管理が必要な状態]
・在宅腫瘍化学療法、在宅悪性腫瘍患者指導管理
自宅や施設で抗がん剤治療などを行っており、副作用の観察が必要な状態。
・在宅輸液療法
痛み止めや薬をポンプなどで持続的に体に入れている状態。モルヒネなどの持続皮下注や持続点滴による疼痛コントロールが代表的な例です。