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2026.05.29
相談員ブログ

点滴が静脈に行われる理由とは?血管の仕組みからわかる安全性

病院で点滴を受けた経験がある人は少なくないでしょう。
また、家族の入院などで、腕から管がつながっている様子を見たことがある人もいると思います。
では、なぜ点滴は「静脈」に行うのでしょうか。
人間の体には「動脈」と「静脈」という2種類の血管がありますが、通常の点滴で使われるにはほとんどが静脈です。
実はこれには、
・血管の位置
・血流の流れる向き
・血圧の違い
・安全性
など、体の仕組みそのものが関係しています。
普段はあまり意識しない静脈ですが、点滴はその特徴を非常にうまく利用した医療なのです。

【血管には「動脈」と「静脈」がある】
人間の体には、全身へ血液を巡らせる血管があります。
その血管は大きく分けると、「動脈」と「静脈」に分かれます。
動脈は、心臓から送り出された血液が流れる血管で、酸素や栄養を体へ届ける役割があります。一方、静脈は、全身を回った血液が心臓へ戻っていく血管です。
(※なお、肺の周りでは流れる血液のタイプ(酸素の量)が逆になる例外もありますが、体全体をめぐる基本的な理解としてはこのイメージで問題ありません。)
健康診断の採血や病院での点滴では、多くの場合、静脈が使われています。

【静脈は皮膚の近くにある】
なぜ点滴では静脈が選ばれるのでしょうか。
大きな理由の一つが、「血管の位置」です。
静脈は比較的皮膚の表面近くを走っているものが多く、外から見えたり触れたりしやすい特徴があります。手の甲や腕に青く見える血管は、ほとんどが静脈です。
そのため、
・針を刺しやすい
・固定しやすい
・長時間使いやすい
という利点があります。
特に点滴は数時間から数日かけて行うこともあるため、安全に状態を維持しやすいことが重要になります。

【動脈は「守られている血管」】
一方で動脈は、損傷すると危険なため、多くが体の深い場所を通る傾向があります。
動脈は心臓から強い圧力で血液を送り出しているため傷つくと大量出血につながるおそれがあります。そのため、筋肉や骨の近くなど、外からの衝撃から守られやすい位置にあることが多いのです。
例えば手首で脈を触れる場所にも動脈がありますが、静脈のように浮き出て見えることはあまりありません。つまり、一般的な点滴をするうえでは、
・深くて刺しにくい
・出血リスクが高い
・傷つける危険が大きい
といった問題があります。

【動脈は「勢いが強すぎる」】
動脈と静脈では、血液の流れる圧力(血圧)にも違いがあります。
動脈は心臓から直接送り出されるため圧力が高く、傷付くと血が勢いよく出ます。
一方、静脈は全身を回った血液が戻る血管で、圧力は比較的低くなっています。さらに静脈は、血液を柔軟に溜め込める性質もあり、体内の血液の多くが静脈側に集まっています。このため、点滴のように少しずつ液体を入れていく治療でも、血管に無理な負担をかけずに受け入れやすいのです。
もし、通常の点滴のつもりで誤って動脈内に薬剤が入ってしまうと、
・強い痛み
・血流障害(その先の血流が止まってしまうこと)
・組織障害(細胞がダメージを受けること)
などを起こす重大な危険があります。医療現場で点滴をする際に「確実に入っているか」を慎重に確認するのはこのためです。

【静脈は「全身につながる回収ルート」】
静脈には、もう一つ点滴に向いた特徴があります。
それは、全身を回った血液を心臓へ戻す“回収ルート”になっていることです。
例えば腕の静脈に点滴をすると、
腕の静脈→心臓→肺(酸素を受け取る)→再び心臓→全身の動脈へ
という流れで運ばれていきます。
いったん心臓に戻り、そこから力強く拍動して送り出されることで、短時間で体全体へ均等に薬が行き渡りやすくなるのです。
つまり静脈は、全身へ安全に物質を届けるための「入口」として使いやすい血管だといえます。
点滴では、
・水分
・電解質(塩分など)
・抗菌薬
・栄養
・痛み止め
など、様々なものを体内へ入れることができます。

【点滴は「水分補給」だけではない】
一般には「点滴=水分補給」という印象が強いかもしれません。
しかし実際には、
・食事が摂れない
・飲み込みが難しい
・嘔吐してしまう
・薬を確実に、素早く届けたい
など、様々な理由で使われます。
特に高齢者では、脱水だけでなく、電解質の乱れや栄養不足も命に関わる問題になります。そのため医療現場では、血液検査などをもとに点滴の内容が細かく調整されています。
また、点滴を行う際には、静脈の太さや走り方、関節の動きなども考慮して、患者さんごとに最も適した場所が選ばれています。

【点滴は「血液の流れ」が利用されている】
点滴は一見すると「ただ血管に液を入れているだけ」のように見えるかもしれません。
しかし実際には、
・皮膚の近くにあって見つけやすい
・圧力が低く、薬液を優しく受け止めてくれる
・心臓へ戻る流れに乗せて、全身に効率よく配れる
という静脈の特徴をフルに活かして、安全に体へ水分や薬を届けています。
逆に動脈は、重要な血液を高い圧力で送り出す血管です。深い場所に守られるように走っているのも、傷つけば危険だからです。
つまり点滴は、人間の血液循環の仕組みをうまく利用して行われている、非常に合理的で安全性の高い治療と言えるでしょう。


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