2026.06.15
相談員ブログ
高齢者が誤嚥性肺炎になりやすい理由とは?原因と予防を解説
なぜ高齢者は誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)になりやすいのでしょうか。「誤嚥」というと、食事中に激しくむせる場面を思い浮かべる方が多いかもしれません。実際に、食べ物や飲み物による誤嚥はよく見られます。
しかし、「むせていないから大丈夫」とは言えません。 誤嚥性肺炎の多くは、本人も周囲も気付かない「隠れた誤嚥」や「睡眠中の誤嚥」が関係して起こるのです。
【誤嚥性肺炎は「お口の細菌」が引き起こす】
誤嚥性肺炎は、食べ物そのものが肺に詰まる病気ではなく、口の中の細菌(歯周病菌など)が唾液や食べ物と一緒に肺に入り込むことで起こる感染症です。
実は、少量の誤嚥(気管へ入ること)は健康な若い人でも寝ている間などに起こっています。しかし、若い世代は激しくむせて排出したり、体の免疫機能で細菌を退治したりできます。
ところが高齢になると、お口の中で細菌が増えやすくなる一方で、体の防御機能が低下するため、肺の中で細菌が繁殖して炎症を引き起こしてしまうのです。
【なぜ高齢者は誤嚥しやすくなるのか?(3つの「低下」)】
高齢者で誤嚥が増えるのは、年齢とともにいくつかの機能がドミノ倒しのように重なって低下するためです。
① 飲み込む力の低下(入りやすくなる)
食べ物を口の中でうまくまとめられず、のどの奥へ送り込むタイミングがズレて、気管に流れ込みやすくなります。
② フタをする動きの低下(防ぎにくくなる)
本来、飲み込む瞬間は気管の入り口にある「喉頭蓋(こうとうがい)」というフタが素早く閉まります。高齢になるとこの動きが遅れ、すき間ができやすくなります。
③ むせる力の低下(排出しにくくなる)
気管に異物が入ったときに「カッカッ!」と激しくむせる反応(咳反射)が弱くなり、入った異物を外に追い出せなくなります。
さらに、「筋力の低下」「認知症による食べる集中力の低下」「お薬の副作用による眠気」なども、これらに拍車をかけます。
【なぜ「むせない誤嚥」や「睡眠中の誤嚥」が起こるのか】
この機能低下が進むと、恐ろしいことに「誤嚥しているのに、まったくむせない」という現象が起こります。これを専門用語で「不顕性誤嚥(ふけんせいごえん)」と呼びます。
私たちは寝ている間も、無意識に唾液を飲み込んでいます。
健康な人なら問題ありませんが、高齢になると、寝ている間に「お口の中の大量の細菌を含んだ唾液」が、むせることもないまま、ジワジワと気管から肺へと流れ込んでしまうのです。
「食事中にむせていないから安心」とは言い切れないのが、誤嚥性肺炎の本当の怖さです。
【誤嚥性肺炎を予防するポイント】
誤嚥性肺炎を完全に防ぐことは難しいものの、日々のケアでリスクを大きく減らすことができます。ポイントは「お口をキレイに保つこと」と「食べる環境を整えること」です。
[毎日の口腔ケアを習慣にする]
一番の予防は、肺に入る「細菌の数」を減らすことです。毎食後の歯磨きだけでなく、舌の掃除や、うがいも効果的です。
[定期的に歯医者さんを受診する]
入れ歯の調整や、プロによる歯石除去でお口の細菌を減らします。
[正しい姿勢で、よく噛んでゆっくり食べる]
少し顎(あご)を引いた姿勢が最も誤嚥しにくい姿勢です。
[食後30分は横にならない]
食べた後すぐにゴロンと横になると、胃から食べ物や胃酸が逆流し、それを誤嚥してしまう原因になります。しばらくは座った姿勢を保ちましょう。
[嚥下(えんげ)体操や足腰の運動]
のどの筋肉を動かす体操や、おしゃべり、歌を歌うことも、飲み込む力を維持する立派なリハビリになります。
【まとめ】
誤嚥性肺炎は、単なる「食事中のうっかり」だけで起こるものではありません。
お口の中の環境の悪化と、体側の「飲み込み・防御・排出」の機能低下が重なり、さらには寝ている間などの「気付かない誤嚥」によって引き起こされます。
「お口を清潔に保つこと」と「のどの筋力を維持すること」。この2つを意識することが、大切な家族とご自身の命を守る第一歩になります。