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2026.07.06
相談員ブログ

食べられなくても痰の吸引が必要なわけについて

【口から食べないケアと、痰の吸引の関係】
胃ろうや経鼻経管栄養、あるいは中心静脈栄養(IVH)などを受けられていて、経口摂取をしていない高齢者は少なくありません。
そんなご家族や周囲の方から、こんな疑問の声を聞きます。
「口から何も食べていないのに、どうして痰の吸引が必要になるの?」
一見すると不思議に思えますが、痰の問題は「食べ物」そのものよりも、「体のバリア機能」や「飲み込む力の低下」と深く関係しているのです。

【痰は「増える」だけではなく「出せない」ことが問題】
そもそも痰とは、肺や気道の粘膜から出る分泌物に、細菌やほこりなどが混ざったものです。
健康な人でも、気道を守るために粘液は常に分泌されており、無意識に飲み込んだり、咳で外へ出したりしています。
経管栄養が必要になる方の場合、痰が急に増えているというよりも、「自力でうまく外へ出せないため、気道にたまっている」というケースが少なくありません。

【栄養の方法に関わらず、体の機能が変化している】
「胃ろうを始めたから」「中心静脈栄養(IVH)になったから痰が増えた」と思われがちですが、栄養のとり方そのものが原因ではありません。
背景にあるのは、そうしたケアが必要になるほど「体全体の機能が弱っている状態」なのです。
例えば、脳卒中や認知症、ご高齢による体力の低下などにより嚥下機能や、痰を出すための「咳をする力」が弱くなっています。そのため、「どんな栄養法か」ではなく、「体を守る力が弱まった結果として、痰の吸引が必要になる」という関係なのです。

【食べていなくても、唾液は毎日1リットル以上出ている】
「何も食べていないのに、誤嚥するなんて」と感じる一番の理由は「唾液」です。
私たちは食事をしていなくても、1日に1〜1.5リットルもの唾液を、毎日絶えず出しています。
健康なら無意識に飲み込めますが、飲み込む力が弱くなると、この唾液がのどの奥にたまっていきます。それが、ご本人が気づかないうちに誤って気管へ流れ込んでしまうことがあるのです。これを誤嚥といいます。
唾液に含まれる口の細菌が気道を刺激することで、体が身を守ろうとして痰を作ることにつながります。

【胃ろうやIVHでも、誤嚥は起こるもの】
「口から食べなければ、誤嚥して肺炎になる心配はないのでは?」と思われるかもしれません。
しかし、ここも少し注意が必要です。
さきほどお話しした「唾液」の垂れ込みだけでなく、胃ろうや経鼻経管栄養などの場合は、注入した栄養剤や胃液が胃から逆流して気管に入ってしまうこともあります。
また、IVHの方であっても、上を向いて寝ている姿勢が続くことで、唾液が気管に流れ込みやすくなります。
本人がむせないまま静かに気道へ入り込むこともあるため、経口摂取をやめても、痰や誤嚥のリスクがゼロになるわけではないのです。

【咳の力が弱くなると、外へ出せなくなる】
たまっている痰を外に出す一番の武器は咳です。
しかし、寝たきりの状態が続いたり体力が落ちたりしてくると、腹筋などの筋力が弱くなり、力強く咳をすることが難しくなります。
問題は「痰の量が多いこと」以上に、「出口まで運ぶ力が小さくなっていること」にあります。だからこそ、ご本人の代わりに、外から吸引して取り除いてあげる必要があるのです。

【口腔ケアの重要性】
「食べていないのだから、口の中は汚れない」と思われがちですが、実は逆なのです。
口を動かさず、物を噛まない状態が続くと、唾液が減って口の中が乾燥し、かえって細菌が繁殖しやすい状態になってしまいます。
この汚れた細菌入りの唾液が気道に垂れ込むと、痰を増やし、誤嚥性肺炎を引き起こすきっかけになります。口から食べていない方にこそ、丁寧で優しい口腔ケアがとても重要な役割を持っています。

【まとめ】
「食べていないのに痰が多い」と感じる背景には、唾液の垂れ込み、寝ている姿勢による逆流や停滞、咳をする力の低下という、体の変化がいくつか重なっています。
痰の吸引は、単に汚いものを取る処置ではありません。自力で出せなくなった体にかわって「呼吸の通り道をきれいにして、守ってあげるための大切なケア」です。この仕組みを知っておくと、痰吸引ケアの大切さが、理解できるのではないでしょうか。
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